PEUGEOT 207 DIYでボディーの浅い傷を補修(その7)(2020/11/12)
クルマいじり好きの中には小傷なら自分で補修塗装すると言う向きも多かろう。
輸入車の補修用塗料はカラーナンバーによる特注だ。私は SOFT99 の「Myタッチアップペンとエアータッチ仕上げセット」を使用しているが、その他の補助用品が標準色の場合とは異なる。

初心者がスムースに塗装作業を進めるためには、実施例の情報や各製品ごとに記載されている詳細な使用方法をつなぎ合わせて頭に入れておく必要がある。テキパキとやらなければならない。
そこで、これまでの経験とメーカーのカスタマーサポートで得た情報をもとに作業マニュアルを作った。
ただし下地処理とマスキングは除く。★は自己責任で。
SOFT99 のカスタマーサポートはいつも懇切丁寧で、問い合わせへの回答も迅速的確。この記事もチェックしてもらった。
フォームで問い合わせる前に FAQ を見ておくこと。
ソリッドカラー、メタリック・パールのいずれもこの方法がよいと思う。
塗料が完全に乾くのに最短1週間かかる。塗装作業は、密閉・換気できる広い車庫でやるなら別だが、ガレージでも戸外でも、少なくとも2日間は晴天が続く無風の日に行う。
1. 用品を揃える
・ ワンセットで10cm×15cmの面積を標準回数(4~5回)塗り重ねできるが、多めに用意しておくこと。
・ エアータッチのアダプターは、連続して行う吹き付け(例えば3箇所の傷ABCを同時に塗装するとか)ごとに1個必要。単体では販売されていないので、「エアータッチ こだわりセット ボカシ剤」か「エアータッチ こだわりセット クリアー」を購入してもよい(本体は使用しないがアダプターが2個付属している)。ぜひ単体で販売してもらいたい。
・ 失敗したときに備えて「エアータッチ専用やり直しスプレー」かスプレーシンナーがあればベター。
2. マスキング用具の作製
★ターゲットが小面積の場合、ペイント飛沫が付着する範囲を必要最小限に制限する(私なりのやり方)。
ターゲットとは下地処理で元の塗膜が変化した部分のこと。
2-1 純正色ペイント吹き用マスキングシート
透明シート(クリアファイルなど)にターゲット外縁より片側で5mm(暫定)大きい穴をあける。ひとつのマスキングシートで複数のターゲットをマスクしてもよい。何種類か作製する。5mmというのはマスキング用具の取付誤差。
2-2 クリアーペイント吹き用マスキングシート
上記マスキングシートの穴の外縁より片側で約2cm(暫定)大きい穴をあける。上記マスキングシートと同数作製する。

2-3 台枠(フレーム)
張りがある透明プラスチックシートに穴をあけ、4本の脚(高さ約3cm)を取付て台枠を作る。穴の大きさは、クリアーペイント吹き用マスキングシートの穴(ひとつまたは複数)を遮らないようにする。
脚の先端には、ボディーを傷付けないよう柔らかいチューブなどを被せておく(下の写真参照)。

仮付けしたマスキング用具
3. リペア部分と周辺をきれいにする
・ 水洗いなどで傷まわりを広範囲にきれいにする。水アカなどは除去しておくこと。
・ 念のため極細コンパウンドでターゲット周囲の汚れを落とす。
・ 完全に乾燥させる。
・ 塗装箇所から30cm以上離して、できるだけ大きい(縦横30cm以上)の厚紙の標的を貼る(試し吹き用)。
4. ペイントが付着してはいけない箇所を覆う
・ 念のためターゲットから1m以内のペイントが付着してはいけない箇所(樹脂部・ガラス・モールドなど)を覆う。
5. エアータッチのセットアップ
・ 使用手順にしたがって行う。
・ Myタッチアップペンのボトルを数十回振って(私のプラクティス)よく混ぜる。
・ Myタッチアップペンのボトルの中身を徐々にエアータッチ専用ボトルに注ぐ。希釈用溶剤の液面が上がってくるが、これが非常に見ずらい。半分ほど注いでからキャップをして軽く振るか、寝かしてしばらく待つとペイントが混ざって見やすくなる。ふたたびキャップを外し、Myタッチアップペンのボトルの中身を「ここまで」と書かれた線まで注ぐ。明るい光にかざすなどしてレベルを注意深く見守り、入れすぎないようにすること。入れすぎると濃くなってユズ肌になりやすい。
・ エアータッチ専用ボトルにキャップをして数十回振ってよく混ぜる。
6. シリコンオフで脱脂
・ エアータッチスプレーの広がりは五十円玉程度ということだが、これまでの経験では 15cm くらい離れた場所にもスプレーダストが飛ぶので、その範囲にシリコンオフを吹き付ける(もちろんシートの場合は拭う)。
・ きれいな布で拭き取る(シートの場合は不要)。
7. タッククロスでゴミ取り(大面積でなければ必須ではない)
8. ボカシ剤吹き(★塗装面積の大きさやカラーによっては必須ではない)
・「ボデーペン Chibi-Can ボカシ剤」を数十回振ってよく混ぜ、試し吹きする。
・ 少なくとも30cm四方くらいの広さにを薄く均一にスプレーする。
・ 次の 8. 純正色ペイント吹きは、ボカシ剤が乾く前に行うこと。
9. 純正色ペイント吹き
・ マスキング用具(マスキングシートを台枠に止めたもの)をボディーに固定する。
・ クリアー吹き用マスキングシートを下に、ペイント吹き用を上にしてフラップ式に重ねて止めておけば、ペイント吹きからクリアー吹きまで一回の段取りで行うことができ、塗装位置がずれない。
・ 上記のような手間をかけない場合、塗り重ねるにしたがってどこがターゲットなのか分かりづらくなる。
・ 純正色ペイントを標的に試し吹きし、正常にスプレーが出ることを確かめる。
・ 塗面から6~10cm離して塗装範囲の長手方向に2回スプレーする。移動速度は30cm/s程度。1秒はこれくらいの長さ。
手首の角度を固定し、肘(または肩)を中心に塗面と平行に動かす。吹き付けは片道のみ。途中で止めないこと。
・ 毎回の吹き付けが終わるごとにエアタッチからアダプター+ボトルを外しカラ吹きする。エアータッチのノズルと空気穴をティッシュで拭い、詰まりを防止する(私は自作した密閉キャップをノズルに被せている)。
・ 10分(夏季は5分)ほど乾燥させる。
・ 試し吹き~乾燥までを繰り返して3~5回重ね塗りする。
・ なお、3回目くらいにいったんアダプター+ボトルを外し、ボトルにキャップをして数十回振り、ふたたび取り付ける。
・ 次の 9. クリアーペイント吹きは、ペイント吹き完了後2~5分後に行うこと。
・ ソリッドカラーなら、このあとすぐ 10. の要領で「ボデーペン Chibi-Can ボカシ剤」を吹いて完了とするのが一般的だが、EWP だとツヤが引けてしまう。しかもコンパウンドで研磨できない。そのため、引き続きクリアーペイントを吹く。ただし、ここでボカシ剤を吹いておけば、次ステップ以降は後日に行ってもよい。
10. クリアーペイント吹き
・ 純正色ペイント吹き用マスキングシートをフラップアップして仮止めする。なお、マスキングシートを手で保持する場合は塗面から約3cm 離す。塗面に触れないよう注意すること。
・「ボデーペン Chibi-Can クリアー」を数十回振ってよく混ぜ、試し吹きする。
・ ペイント吹きが完了してから2~5分後に、塗面から 15~20cm 離してまんべんなくスプレーする。メーカーは「薄めに」と表現しているが、1回ということだろう。移動速度は30cm/s程度。塗面と平行に動かす。途中で止めないこと。
・ スプレー缶を逆さにして2秒くらいカラ吹きし、噴射口をよく拭いてからキャップをする。
・ 10分ほど乾燥させる。
・ 試し吹き~乾燥までを繰り返して数回重ね塗りする。毎回スプレー前に数十回振ってよく混ぜること。
・ 次の 10. ボカシ剤吹きは、クリアーペイント吹き完了後1~2分以内に行うこと。
11. ボカシ剤吹き
・ マスキング用具はボディーに付けたままとする(まずターゲットに吹き付けるため)。
・「ボデーペン Chibi-Can ボカシ剤」を数十回振ってよく混ぜ、試し吹きする。
・ クリアーペイント吹きが完了したあと1~2分以内に、塗面から15~20cm離して、マスキングシートの穴に向けてサッと1回だけ吹く。
・ すぐにマスキング用具を外し、クリア塗装部周囲に円を描くようにスプレーする。乾きにくいので液ダレしないよう注意。
クリアーペイントはかなり広範囲に飛び散るので、クリアー塗装部から30cm程度離れたところまで吹き付けたほうがよい。
・ ボカシ剤をスプレーして少し経つと表面がしっとり湿ったようになるので、いったんスプレーを止め、塗面状態を見守る。
・ ざらつきが残っていると感じられたらさらにボカシ剤をスプレーする。
12. コンパウンド研磨
・ クリアーで仕上げたあとは、1週間以上経ってから、粒子の細かいコンパウンドで研磨してもよい。
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各種のコンパウンドが販売されているが、謳い文句を読んだだけでは使い分け方がいまいち判然としない。
• コンパウンド極細:ペイント補修の最終仕上げ、メタリック・マイカ塗装車の汚れ落とし、プラスチック部の汚れ落とし
• 液体コンパウンド:ツヤびけした塗装表面の汚れ・劣化被膜をクリーニングして鮮やかに回復、補修塗装の最終仕上げ磨き、濃色・メタリック・マイカ塗装の超鏡面仕上げ
• 液体コンパウンド3000:#2000 以上のサンドペーパーを使用した後の研き跡を消す、塗装補修のブツブツの除去、塗装面の研き跡やザラツキを消す
• 液体コンパウンド9800:塗装面の超鏡面仕上げ、ダーク系・マイカ・メタリック車の最終仕上げ
塗装の仕上げ用には、極細 022 ⇒ 液体コンパウンド 024 でよいのだろう。
ガンコな水アカやタール・ピッチを非化学的に除去するには、コンパウンド細目か液体コンパウンド3000を使用する。
例えばドアにある手のひら大の範囲の補修を業者に頼んだとしよう。少なくともドアの 1/3 の範囲を塗装してボカすという。
とくにホワイト系は、隣接パネルとの違いが分からない程度に色合わせができるかどうかは確約できないと。10~20万かかる本格的リペアについても、業者は同様のことを言う。
けっきょく、全塗装(最低50万)でもしないかぎり、再塗装をわからなくするのは不可能ということになる。
人間の目とは不思議なもので、隣り合ったパネルのように細い境界線があると色味の違いはよく分かるものだ。206 購入時のフェンダーのように。逆に、手を加える範囲をできりだけ小さくしつつ境界をぼかせば、軽い汚れのように目立たないはず。
トライしてみよう。
REFERENCE:
・ 初心者でもできる!エアータッチを使って車の簡単キズ補修やってみました
・ レトロカー再生への道 | PEUGEOT 106 の小キズを補修する
・ エアータッチの使い方(動画)
・「Myタッチアップペン EWP とエアータッチ仕上げセット」Q&A
・「ボデーペン Chibi-Can ボカシ剤」の使い方 1 2
・「ボデーペン Chibi-Can クリアー」の使い方